code is poetry.
これはWordPressのフッターに書かれている一文。WordPressの普及と進化によってウェブサイトの制作環境が大きく変化し、個人レベルであってもブログからもう一歩外枠へ向けてメッセージを発信するためのウェブサイトを簡単に構えることができるようになった。プログラムを書き足すことでウェブサイトの佇まいがたちまちに変わり、そこに発信者の個性が滲みでる。ウェブデザイナーやプログラマーはソースを開いてその過程に様々な思いを寄せる。”code is poetry.”とは出来上がったウェブサイト越しに見える発信者のメッセージだったり個性を、またはそのウェブサイトが出来上がり公開されるまでの過程を「詩的作品だ」あるいは「詩のように美しい」と讃えているのかもしれない。
詩は、ことば。
このように”poetry”には〈詩〉〈詩的技法〉〈詩的作品〉〈(詩のような)美しさ〉という意味があるのだけど、僕はこの〈詩〉という言葉をものをつくり発信していく際のすべての思想の根っことして捉え意識している。加えて言うならば、僕はこの〈詩〉という字を〈し〉ではなく〈ことば〉と読むようにしている。あらゆるコミュニケーションや感情や思いというのは心の中に詩のかたちで刻まれて残り蓄積されていくんじゃないかと思っていて、たとえば街を歩いていて素敵な景色を目にしたとき、普通国語の教科書に出てくるような文章でその光景のことをインプットしない。もっと断片的なものだ。誰かにそのことを話たりする時に、その欠片をつなぎあわせて一生懸命ことばでビジュアルを表現しようとする。意識することはあまりないだろうけど、自分で思い出すのに必要な最小構成要素のことばのかけら、これって詩なんじゃないのかなと思う。挫折―というよりも逃避―して途中で辞めてしまった大学の心理学の授業のなかで、記憶は忘れてしまっているのではなくて思い出せないだけだ、という話、そしてその仕組みを説明する時に話した、大きな湖の真ん中でぽつんと浮かんだボートから釣竿で水底に糸を垂らして引っ張りあげてくる様子、というイメージが強く印象に残っていて、つまり自分のなかの水底に蓄積した詩を引っ張りあげてくることがうまく出来たら、人は誰でも詩人なのだろう。だから僕は詩はことばの粒子、あるいはことばそのもの、とずっと思い続けている。
この世界でことばで表せるものなんて、ほんの僅か。
僕はデザインを仕事にしている。ウェブサイトを作ったり、名刺を作ったり、パンフレットを作ったり。そうしたデザインをするとき、僕はすべてのデザインは〈ことばのかわりになるもの〉だと捉えている。「メールなんかで告白しないで、ちゃんと会って伝えてよ」じゃないけれど、人は顔を見ながらことばを交わすのが一番伝わる。でも、いつでもその方法がとれるわけじゃない。だからそうした伝えたいことばをことばの代わりにデザインで伝える。さっきの愛の告白でいうと、「僕の気持ち、受け取って下さい!」って花束を差し出す時の花束って、ことばの代わりなんじゃないかな。ことばを交わすのが一番伝わるんだろうけど、どのことばが適当なのか分からない時もある。あるいは「僕の君への思いはことばにしてしまうとなんてチープなんだろう」って風に、かえってことばだと勝手に推し量られてしまう時もある。だから〈表現〉に託す。これも僕の個人的な考えだけど、きっとこの世界でことばで表せるものなんて、ほんの僅かしかないんだと思う。そのことばにできないもどかしさを人は都度、別の行為に置き換えている。僕はデザインが好きだけど、アートも好きで、音楽や美術などの芸術もことばで表せない何かを表現にかえているのだろうと思ってる。
design is poetry.
ことばにできないかわりの表現なのだとすれば、つまり表現もことばなんだということだ。それをあれこれ想像するのって、なんて楽しいことなんだろう。僕たちには表現を読み解くという最大の娯楽がある。だから音楽もアートもなくならない。何だかよく分からないものにも何となく惹かれてしまう。デザインもそうで、送り手が伝えたいことばをじっくり聞いて、それをデザインに置き換える。デザインからことばが、会話が生まれる。だから、デザインはことば。冒頭の「code is poetry.」ということばに出会った時、僕はずっと心の中でもやもやしていたものがすっきり晴れていくような感覚に包まれた。「design is poetry.」だと着地できたからだ。僕はこれを自分の根っこにしようと決めた。
ドメインが値下がりした時期に何の気なしに取得した自分の名前、kentakawamura.comをどう使おうか持て余していたけれど、先頭に小さく書いた通り、ここを自分のインプットとアウトプット、いま一番大切だと思って取り組んでいる〈ことばをことばで表す〉つまり〈編集〉を試す場所としてコラムかエッセイみたいなものとしてことばにしていこうと思う。ことばにするにあたって、まず自分自身の〈ことば〉への思いをまとめようと一番はじめにこれを書くことにした。なるべくちゃんと読み応えのあるものに編集していこうと思います。

